「WEEK-END PARTY 〜forever young〜」
特集番組
◆放送局:FM NACK5(FM79.5)
◆放送日:2006.9.30(土)24:00〜28:00
◆番組名:WEEKEND-PARTY フォーエヴァーヤング
◆放送時間:AM1:50〜2:15頃
■私の親友のSさんが書き起こしてくれました!感謝^^
DJ:富澤一誠(以下「富」)
DJ:本多慶子(以下「本」)
・番組内のコーナー紹介・
本:それではここで今夜の【パーティーメニュー紹介】です。
・♪“季節の中で”(BGM)・
本:今夜から3週連続で特別企画 【松山千春デビュー30周年記念 スペシャルラジオドラマ】がスタートします。
1979年に発表され ベストセラーとなった松山千春さんの自伝小説【足寄より】が、朗読ドラマとなって発売されます。
それをウィークエンドパーティーだけの為に、新たに編集してお送りする特別バージョンです。
ココだけでしか聞けない、松山千春ストーリーにご期待下さい。
富:昔、ラジオドラマってあったじゃないですか?
で、それが忘れ去られてしまった。でも、そこが一つの傍点なんだけれども
でもねぇ ラジオドラマ凄いわ。これはね〜 私も聞いてますけどねぇ これはぁ中々 素晴らしい!
本:私は今日初めて聞けるので・・
富:あ!そうですか。この番組が初めてかもね
本:初めてだと思いますよ。 ぜひ、みなさん お楽しみに。
============================
・コーナー始まり・
本:今夜から なんと3週連続で、松山千春さんの自伝【足寄より】を朗読ドラマでお送りいたします。
この企画、10月の4日に「ユニバーサルミュージック」からリリースされます、
【松山千春デビュー30周年記念ドラマCD 足寄より〜旅立ち編〜】をウィークエンドパーティー用に、特別編集したものなんです。
ぜひ聞いていただきたいCDになってますんで 今日から3週連続で放送いたします。
ぜひ楽しんで頂きたいと思います。
それでは第一話、お聞き下さい。
============================
============================
・田口トモロヲ 語り・
足寄より〜旅立ち編〜
原作:松山千春 【足寄より】
脚本・演出:朝倉薫
・ぽぉ〜ッ!!(汽笛音)・
松山 千春.. 俺の前に現れた二十歳の青年は生意気を絵に描いたような奴だった。
例えようのない美しい顔立ちとその声は俺の心を一瞬で鷲掴みにした。
疑うことを知らない真っ直ぐな眼差しで、俺は魅入(みい)られてしまった。
昭和50年4月 フォーク音楽祭帯広予選会 それが彼との出会いだった。
・フォーク音楽祭の会場内、拍手の音・
木瀬:『はい どうも! 足寄町から来た松山千春くんでした。曲はオリジナル曲で「旅立ち」でした。審査員席! STVラジオディレクターの竹田健二さん いかがでしたか?』
竹:『ん、ギターが悪いね』
千:『ギターが悪いのくらい分かってますよ。バイトで買った5000円のギターなんですから。俺はギターの品評会に来たんじゃないんですよ。歌はどうだったんですか、歌は。』
竹:『松山君、コピー曲を歌ってくれ』
・♪“22才の別れ”ギターのイントロ・
ギターが悪い、と言ったのは 俺の最大の褒め言葉だった。 歌は文句のつけようがなかった。
千春は「風」の“22才の別れ”を歌った。
それは、誰のものでもない 松山千春の歌声だった。
美しくどこまでも伸びる高音。噛み締めるように歌いながら、歯切れのいいスタッカートにフレーズ。
もっと彼の歌声を聞きたい、と思った。
34歳のしがないラジオディレクターの血が 熱く騒いだ。
竹:『ちょっと 松山くん。 いいか?』
千:『はい』
俺は、千春を外へ誘った。足寄の山奥から出てきた千春は 一人ぼっちだった。
地元で歌っている連中は、顔見知りで固まって身内で仲良くしている。
だけど千春は、一人でステージの隅っこで、突っ張っていた。
千:『なんだかぁ、俺の声が広がってぇ 吸い取られていくみたいな感じなんですよ。快感でしたねぇ〜、俺はこのために生まれてきたんだぁ、って思いました』
竹:『そうかぁ。今年で幾つになる?』
千:『二十歳です』
竹:『二十歳かぁ。』
千:『えぇ、成人式ぃ 紋付袴で出て新聞載ったんです』
竹:『そう言やぁ 見たような気がするなぁ? 北海道新聞』
千:『それです、成人式って言やぁ 武士なら元服ですからねぇ 仲間と派手に行こうや』
竹:『新聞といえば、君のお父さん新聞社の社長さんだったよなぁ?』
千:『あぁ、それは・・。竹田さん、十勝新聞って知ってます? 知らないっしょぉ? 足寄で親父が一人でやってるんです。俺、親父の新聞 集金して周ってるんです』
・♪“こんな夜は”(BGM)みんなぁ 寒いだろ〜ね〜・
竹:『そうかぁ、それは悪かったな』
千:『良いんです、新聞社の息子って聞いたらボンボンだ、って思いますよね。 俺、高校卒業するまで友達 家に連れて来た事なかったんですよ』
竹:『歌は いつから?』
千:『小学生のとき。岡林信康さんが足寄公民館に来たんですよ、ギター一本持って。俺 コレだぁー!って思ったんですよ。友達の兄貴にギター借りて、始めたんです。【 ? 】が欲しかったなぁ。だから俺、音楽祭に出たんです』
竹:『そうか、次は札幌大会が待ってる』
千:『歌えるんなら、どこでも行きますよ!』
千春の【 ? 】が、俺には心地よかった。
少し時間は掛かるかもしれない。
だが彼は、きっとモノになる。
ちょっと おこがましいが、俺なら彼を売り出してやれる自信があった。
吹雪の夜、破れた戸の隙間から 雪が吹き込む。
しばれる様な寒さの中、父の背中にくっついて眠るのが 最高の幸せだったことを ふっと 千春が誇らしげに語ってくれた事が、、
『そういう思い出があれば、子供っていうのは親を尊敬できる。親父には絶対に言えないですけどね。』と、笑って語ってくれた。
貧乏なんて、なんでもなかった..悲しんでる暇もなかった。
千春は ただ 歌うことしかなかったのだ。
家庭や社会のせいにして、現実から逃げる若者もいる。
千春は笑顔で立ち向かってった。
彼の歌、人の心に届くのは そんな理由があるのかもしれない。
・♪“こんな夜は”
冷たく凍〜る みんな 寂しいだろうね 一人の夜は 誰か寄り添う 人が欲しいね 隙間風が心 吹きぬける前に 眠ってしまおう こんな夜は♪
フォーク音楽祭も いよいよ「全道大会」という日。
会場は「札幌中島スポーツセンター」。
千春は、前の夜から車を運転してくると言っていた。
俺はなぜか、イヤな予感をしていた。
リハーサル時間の10分前になっても、千春は来なかった。
そして一本の電話が、俺宛に掛かってきた。
・チリリリィ〜ン(電話の音)・
警察からだった。
竹:『はい、竹田です。 えぇ!?松山?な〜にやってんだぁ、お前! 事故ったぁ?うん、調書終わったのか? じゃぁ すっ飛んで来い!まだ間に合う。 あぁ、切るよ』『ADのぉ〜・・』
AD:『山下です!』
竹:『あぁ!山下くん、チューリップのあとで千春のリハをやる。時間は空けといてくれないかぁ?』
AD:『分かりました。・・松山くん、大丈夫ですかぁ?』
竹:『夕べ、タクシーと接触したらしい。事故は大した事はなかったが、朝から調書を取られていたそうだ』
AD:『無事なんですねぇ! 良かったぁ〜』
スタッフ達も、千春の無事を喜んだ。
誰もがもう一度、千春の歌声を聞きたいと 願っているようだった。
・キキキキィーッ!(車のブレーキ音)・
・ドンッ!(車のドアを閉める音)・
・ダッダッダッダ!(走る足音)・
千:『すみません、松山です。遅くなりました』
竹:『パトカーに先導されて来るなんて、とんだ大物だよ。千春は』
千:『え? いやぁ〜 』
竹:『アハハハ ほら、ピアノでチューニングして。チューリップ終わったらリハやるから。』
千:『え? ピアノでチューニング?』
竹:『どうしたんだ?』
千:『いや、あんまさぁ 今まで自分の声に合わせてたから、ピアノでチューニングなんてした事ないですよ』
何もかもが型破りだった。
チューリップの横で、同時にチューニングの方法を教えてもらっている千春は、
何も知らない子供のようだった。
その千春が歌いだすと、パトカーに先導された姿を見ていた守衛が『やっぱりプロは違うねぇ』と感心していた。
俺は笑いを堪えながら『やっぱりプロは違うでしょ?』と答えた。
そんな千春に注目している男が、俺の他にも 一人いた。
業界のスゴ腕マネージャーと呼ばれる 山本さんだった。
山:『竹田ちゃ〜ん、あのニッカポッカの彼、良いねぇ。 会場の隅でさぁ、一人で突っ張っててぇ。』
竹:『あッ!山本さん、来てたんですか。これから審査なんですよ。』
山:『審査ッ? な〜に言ってんのぉ! 一押しでしょう、彼。 良いねぇ〜、欲しいなぁ』
竹:『いやぁ、・・ハッハッハッ』
確かに 俺は決めていた。
残るのは、千春だと..。
だが、他の審査員たちは千春を選ばなかった。
理由は歌ではなかった。
歌は、今すぐレコードを出せるのではないか、という意見もある程の評判だった。
問題なのは、歌よりも 千春の格好や言動だった。
千春の父親が、一人で新聞社を営んでいるとは知らない審査員が
『新聞社のボンボンだ、甘やかされて育っているに違いない』と言ったりして。
俺は 覚悟を決めた。
竹:『残念だったな、千春』
千:『すみません、竹田さん。迷惑かけちゃったね』
竹:『いいんだ、気にするな。ラジオで使うかもしれないから、曲 溜めておけよ』
千:『え?』
竹:『どんどん書くんだよ、諦めるな。』
千:『あ、はい』
信用した声ではなかった。
俺も、その時はまだ、なんの企画も浮かんではいなかった。
だが・・1年後、俺の作った番組で松山千春の歌を流したい。。そう思っていた。
・ぽぉ〜ッ!!(汽車の汽笛音)・
千春は、まだ雪の残る足寄へ帰っていった。
彼が本物なら、決して埋もれることはない。
俺はそう信じていた。
やがて、俺にも千春にとっても、長い一年が過ぎた。
・チリリ〜ン(電話音)・
父:『はい!十勝新聞社。・・千春?・・はい、おりますがぁ』『おーい!千春、STVラジオの竹田さん、って人から お前に』
千:『もしもし、竹田さん? 覚えててくれたんですね! え”ッ!?ラジオ? 俺のコーナーを作るぅ!!?』
数日後、俺はSTVラジオの打ち合わせ室へ千春と再会した。
竹:『久しぶりだなぁ、千春。元気だったか?』
千:『竹田さんこそ。俺のこと忘れてなかったんですね』
竹:『忘れるわけないだろう。一緒にやる、って約束したじゃないか』
千:『へッ(笑)、俺の親父が、人間言葉じゃなくて心が大事だ、って言ってたけど、 そういう事なんですね』
竹:『親父さん、元気か?』
千:『えぇ、元気ですよ』
竹:『君はいつでも笑顔なんだなぁ。 さて!君のコーナーは15分間。毎週2曲、新曲を発表する、良いね?』
千:『毎週2曲・・ってことは、一ヶ月で8曲?半年で48曲ですかぁ?』
竹:『あぁ、アルバムが4枚リリースできる勘定だ』
千:『アルバム、って。。まだデビューもしてないんですよ。シングルだって出してないのに』
竹:『イヤなら、コノ話は ナシ』
千:『いややや!やりますよ!!毎週2曲。 竹田さん、凄いの作ってきますからね!』
一年ぶりに会った千春は、相変わらず生意気だった。
去年のフォーク音楽祭で落選してからは、一年間、父親の新聞社で集金を手伝いながら 歌作りに励んでいたと言う。
口さがない町の若者たちは、ギターを弾いて歌ってばかりいる千春を 笑ったそうだ。
足寄高校を首席で卒業してもブラブラしている様じゃ、親父も泣いているだろう、と。
だが、そんな町の声を千春は気にもしていなかった。
二月に姉が結婚し、家族で亀の子温泉に旅行した時の事を 千春は嬉しそうに語ってくれた。
ニッカポッカにサングラスで突っ張ってはいるが 家族想いの心根の優しい男なのだ。
その頃 作ったのが【かざぐるま】や【父さん】という曲だった。
・♪“門出”イントロ(BGM)・
こうして、千春のラジオ出演が始まった。
金曜日の夜に夜行で足寄を出て、土曜日の朝 札幌に着く。ラジオに出演して、日曜日に再び足寄へ帰る。
こうした日々の中で、次々に名曲が生まれた。
・ぽぉ〜ッ!!(汽車の汽笛音)・(BGM:門出)
【夜汽車】などは、十勝平野の朝焼けを 汽車の窓から見ながら作ったそうだ。
俺は、千春の新曲を聞きながらデビュー曲を 悩んでいた(?)。そんな事ばかりを考えていた。もちろん、千春は知るよしもなかった。
俺の予想した通り、千春はみるみる成長した。
初めは司会者をつけて歌うだけだったコーナーを トークもいけるとくんで千春一人に【 ? 】した。
千:『竹田さん、俺 札幌へ友達ができたんですよぉ、行きつけのお店で。東京から来たミュージシャンとかぁ、中島みゆきっていう歌の上手い女とか。色々知り合いもできたんです。』
・♪“門出”
投げ捨ててぇ〜 僕も手を振る 姿が見えたら 負けだよ 一度でも 後ろを振り向いちゃ
今はただ お前は 自分の夢へと 旅立て 心の翼を 広げて そのまま 大人になるがいい
全てを投げ捨てて いつか どこかで また会える 日も来る
涙はいやだよ お前の門出さ いつかどこかで また会える 日も来る
もう一度 会えたなら その時は 離さない ♪
=======================================
本:松山千春スペシャルドリーマー【足寄より 旅立ち編】第一夜
◆只今の出演◆
松山千春:塚本高史
竹田健二:田口トモロヲ
上司:堀川良
その他:朝倉薫演劇団 でお送りしました。
お送りした曲は、
松山千春【こんな夜は】そして【門出】でした。
富:来週は・・。東京に行ってレコーディング。
そしてシングルレコードが出て、まず最初、北海道から初公演をして それから、千春がブレイクしていく..ってあたりかな?
これもまたドラマがいっぱいあるんですよ。
本:それでは次回、【松山千春スペシャルドラマ 足寄より〜旅立ち編〜第二話】を どうぞお楽しみに。
========================================
〜書起し後記〜
◆表示について◆
松山千春(以下「千」)
父親(以下「父」)
竹田健二(以下「竹」)
山本マネージャー(以下「山」)
木瀬アナウンサー(STVラジオアナウンサー、フォーク音楽祭の司会者(以下「木」))
その他(守衛(守)・DJ(DJ))
※ ラジオドラマ形式で作られているCDというのを、音楽評論家の富澤一誠さんが高く評価されてました。
※ 放送県外のため、雑音が多く、聞き取れない部分が多々あり、DJの部分は多く略させていただきました。
発売CDの文中も、聞き取れなかった部分があった為、【 ? 】になってる箇所などあり、申し訳ございません。
◆放送局:FM NACK5(FM79.5)
◆放送日:2006.9.30(土)24:00〜28:00
◆番組名:WEEKEND-PARTY フォーエヴァーヤング
◆放送時間:AM1:50〜2:15頃
■私の親友のSさんが書き起こしてくれました!感謝^^
DJ:富澤一誠(以下「富」)
DJ:本多慶子(以下「本」)
・番組内のコーナー紹介・
本:それではここで今夜の【パーティーメニュー紹介】です。
・♪“季節の中で”(BGM)・
本:今夜から3週連続で特別企画 【松山千春デビュー30周年記念 スペシャルラジオドラマ】がスタートします。
1979年に発表され ベストセラーとなった松山千春さんの自伝小説【足寄より】が、朗読ドラマとなって発売されます。
それをウィークエンドパーティーだけの為に、新たに編集してお送りする特別バージョンです。
ココだけでしか聞けない、松山千春ストーリーにご期待下さい。
富:昔、ラジオドラマってあったじゃないですか?
で、それが忘れ去られてしまった。でも、そこが一つの傍点なんだけれども
でもねぇ ラジオドラマ凄いわ。これはね〜 私も聞いてますけどねぇ これはぁ中々 素晴らしい!
本:私は今日初めて聞けるので・・
富:あ!そうですか。この番組が初めてかもね
本:初めてだと思いますよ。 ぜひ、みなさん お楽しみに。
============================
・コーナー始まり・
本:今夜から なんと3週連続で、松山千春さんの自伝【足寄より】を朗読ドラマでお送りいたします。
この企画、10月の4日に「ユニバーサルミュージック」からリリースされます、
【松山千春デビュー30周年記念ドラマCD 足寄より〜旅立ち編〜】をウィークエンドパーティー用に、特別編集したものなんです。
ぜひ聞いていただきたいCDになってますんで 今日から3週連続で放送いたします。
ぜひ楽しんで頂きたいと思います。
それでは第一話、お聞き下さい。
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・田口トモロヲ 語り・
足寄より〜旅立ち編〜
原作:松山千春 【足寄より】
脚本・演出:朝倉薫
・ぽぉ〜ッ!!(汽笛音)・
松山 千春.. 俺の前に現れた二十歳の青年は生意気を絵に描いたような奴だった。
例えようのない美しい顔立ちとその声は俺の心を一瞬で鷲掴みにした。
疑うことを知らない真っ直ぐな眼差しで、俺は魅入(みい)られてしまった。
昭和50年4月 フォーク音楽祭帯広予選会 それが彼との出会いだった。
・フォーク音楽祭の会場内、拍手の音・
木瀬:『はい どうも! 足寄町から来た松山千春くんでした。曲はオリジナル曲で「旅立ち」でした。審査員席! STVラジオディレクターの竹田健二さん いかがでしたか?』
竹:『ん、ギターが悪いね』
千:『ギターが悪いのくらい分かってますよ。バイトで買った5000円のギターなんですから。俺はギターの品評会に来たんじゃないんですよ。歌はどうだったんですか、歌は。』
竹:『松山君、コピー曲を歌ってくれ』
・♪“22才の別れ”ギターのイントロ・
ギターが悪い、と言ったのは 俺の最大の褒め言葉だった。 歌は文句のつけようがなかった。
千春は「風」の“22才の別れ”を歌った。
それは、誰のものでもない 松山千春の歌声だった。
美しくどこまでも伸びる高音。噛み締めるように歌いながら、歯切れのいいスタッカートにフレーズ。
もっと彼の歌声を聞きたい、と思った。
34歳のしがないラジオディレクターの血が 熱く騒いだ。
竹:『ちょっと 松山くん。 いいか?』
千:『はい』
俺は、千春を外へ誘った。足寄の山奥から出てきた千春は 一人ぼっちだった。
地元で歌っている連中は、顔見知りで固まって身内で仲良くしている。
だけど千春は、一人でステージの隅っこで、突っ張っていた。
千:『なんだかぁ、俺の声が広がってぇ 吸い取られていくみたいな感じなんですよ。快感でしたねぇ〜、俺はこのために生まれてきたんだぁ、って思いました』
竹:『そうかぁ。今年で幾つになる?』
千:『二十歳です』
竹:『二十歳かぁ。』
千:『えぇ、成人式ぃ 紋付袴で出て新聞載ったんです』
竹:『そう言やぁ 見たような気がするなぁ? 北海道新聞』
千:『それです、成人式って言やぁ 武士なら元服ですからねぇ 仲間と派手に行こうや』
竹:『新聞といえば、君のお父さん新聞社の社長さんだったよなぁ?』
千:『あぁ、それは・・。竹田さん、十勝新聞って知ってます? 知らないっしょぉ? 足寄で親父が一人でやってるんです。俺、親父の新聞 集金して周ってるんです』
・♪“こんな夜は”(BGM)みんなぁ 寒いだろ〜ね〜・
竹:『そうかぁ、それは悪かったな』
千:『良いんです、新聞社の息子って聞いたらボンボンだ、って思いますよね。 俺、高校卒業するまで友達 家に連れて来た事なかったんですよ』
竹:『歌は いつから?』
千:『小学生のとき。岡林信康さんが足寄公民館に来たんですよ、ギター一本持って。俺 コレだぁー!って思ったんですよ。友達の兄貴にギター借りて、始めたんです。【 ? 】が欲しかったなぁ。だから俺、音楽祭に出たんです』
竹:『そうか、次は札幌大会が待ってる』
千:『歌えるんなら、どこでも行きますよ!』
千春の【 ? 】が、俺には心地よかった。
少し時間は掛かるかもしれない。
だが彼は、きっとモノになる。
ちょっと おこがましいが、俺なら彼を売り出してやれる自信があった。
吹雪の夜、破れた戸の隙間から 雪が吹き込む。
しばれる様な寒さの中、父の背中にくっついて眠るのが 最高の幸せだったことを ふっと 千春が誇らしげに語ってくれた事が、、
『そういう思い出があれば、子供っていうのは親を尊敬できる。親父には絶対に言えないですけどね。』と、笑って語ってくれた。
貧乏なんて、なんでもなかった..悲しんでる暇もなかった。
千春は ただ 歌うことしかなかったのだ。
家庭や社会のせいにして、現実から逃げる若者もいる。
千春は笑顔で立ち向かってった。
彼の歌、人の心に届くのは そんな理由があるのかもしれない。
・♪“こんな夜は”
冷たく凍〜る みんな 寂しいだろうね 一人の夜は 誰か寄り添う 人が欲しいね 隙間風が心 吹きぬける前に 眠ってしまおう こんな夜は♪
フォーク音楽祭も いよいよ「全道大会」という日。
会場は「札幌中島スポーツセンター」。
千春は、前の夜から車を運転してくると言っていた。
俺はなぜか、イヤな予感をしていた。
リハーサル時間の10分前になっても、千春は来なかった。
そして一本の電話が、俺宛に掛かってきた。
・チリリリィ〜ン(電話の音)・
警察からだった。
竹:『はい、竹田です。 えぇ!?松山?な〜にやってんだぁ、お前! 事故ったぁ?うん、調書終わったのか? じゃぁ すっ飛んで来い!まだ間に合う。 あぁ、切るよ』『ADのぉ〜・・』
AD:『山下です!』
竹:『あぁ!山下くん、チューリップのあとで千春のリハをやる。時間は空けといてくれないかぁ?』
AD:『分かりました。・・松山くん、大丈夫ですかぁ?』
竹:『夕べ、タクシーと接触したらしい。事故は大した事はなかったが、朝から調書を取られていたそうだ』
AD:『無事なんですねぇ! 良かったぁ〜』
スタッフ達も、千春の無事を喜んだ。
誰もがもう一度、千春の歌声を聞きたいと 願っているようだった。
・キキキキィーッ!(車のブレーキ音)・
・ドンッ!(車のドアを閉める音)・
・ダッダッダッダ!(走る足音)・
千:『すみません、松山です。遅くなりました』
竹:『パトカーに先導されて来るなんて、とんだ大物だよ。千春は』
千:『え? いやぁ〜 』
竹:『アハハハ ほら、ピアノでチューニングして。チューリップ終わったらリハやるから。』
千:『え? ピアノでチューニング?』
竹:『どうしたんだ?』
千:『いや、あんまさぁ 今まで自分の声に合わせてたから、ピアノでチューニングなんてした事ないですよ』
何もかもが型破りだった。
チューリップの横で、同時にチューニングの方法を教えてもらっている千春は、
何も知らない子供のようだった。
その千春が歌いだすと、パトカーに先導された姿を見ていた守衛が『やっぱりプロは違うねぇ』と感心していた。
俺は笑いを堪えながら『やっぱりプロは違うでしょ?』と答えた。
そんな千春に注目している男が、俺の他にも 一人いた。
業界のスゴ腕マネージャーと呼ばれる 山本さんだった。
山:『竹田ちゃ〜ん、あのニッカポッカの彼、良いねぇ。 会場の隅でさぁ、一人で突っ張っててぇ。』
竹:『あッ!山本さん、来てたんですか。これから審査なんですよ。』
山:『審査ッ? な〜に言ってんのぉ! 一押しでしょう、彼。 良いねぇ〜、欲しいなぁ』
竹:『いやぁ、・・ハッハッハッ』
確かに 俺は決めていた。
残るのは、千春だと..。
だが、他の審査員たちは千春を選ばなかった。
理由は歌ではなかった。
歌は、今すぐレコードを出せるのではないか、という意見もある程の評判だった。
問題なのは、歌よりも 千春の格好や言動だった。
千春の父親が、一人で新聞社を営んでいるとは知らない審査員が
『新聞社のボンボンだ、甘やかされて育っているに違いない』と言ったりして。
俺は 覚悟を決めた。
竹:『残念だったな、千春』
千:『すみません、竹田さん。迷惑かけちゃったね』
竹:『いいんだ、気にするな。ラジオで使うかもしれないから、曲 溜めておけよ』
千:『え?』
竹:『どんどん書くんだよ、諦めるな。』
千:『あ、はい』
信用した声ではなかった。
俺も、その時はまだ、なんの企画も浮かんではいなかった。
だが・・1年後、俺の作った番組で松山千春の歌を流したい。。そう思っていた。
・ぽぉ〜ッ!!(汽車の汽笛音)・
千春は、まだ雪の残る足寄へ帰っていった。
彼が本物なら、決して埋もれることはない。
俺はそう信じていた。
やがて、俺にも千春にとっても、長い一年が過ぎた。
・チリリ〜ン(電話音)・
父:『はい!十勝新聞社。・・千春?・・はい、おりますがぁ』『おーい!千春、STVラジオの竹田さん、って人から お前に』
千:『もしもし、竹田さん? 覚えててくれたんですね! え”ッ!?ラジオ? 俺のコーナーを作るぅ!!?』
数日後、俺はSTVラジオの打ち合わせ室へ千春と再会した。
竹:『久しぶりだなぁ、千春。元気だったか?』
千:『竹田さんこそ。俺のこと忘れてなかったんですね』
竹:『忘れるわけないだろう。一緒にやる、って約束したじゃないか』
千:『へッ(笑)、俺の親父が、人間言葉じゃなくて心が大事だ、って言ってたけど、 そういう事なんですね』
竹:『親父さん、元気か?』
千:『えぇ、元気ですよ』
竹:『君はいつでも笑顔なんだなぁ。 さて!君のコーナーは15分間。毎週2曲、新曲を発表する、良いね?』
千:『毎週2曲・・ってことは、一ヶ月で8曲?半年で48曲ですかぁ?』
竹:『あぁ、アルバムが4枚リリースできる勘定だ』
千:『アルバム、って。。まだデビューもしてないんですよ。シングルだって出してないのに』
竹:『イヤなら、コノ話は ナシ』
千:『いややや!やりますよ!!毎週2曲。 竹田さん、凄いの作ってきますからね!』
一年ぶりに会った千春は、相変わらず生意気だった。
去年のフォーク音楽祭で落選してからは、一年間、父親の新聞社で集金を手伝いながら 歌作りに励んでいたと言う。
口さがない町の若者たちは、ギターを弾いて歌ってばかりいる千春を 笑ったそうだ。
足寄高校を首席で卒業してもブラブラしている様じゃ、親父も泣いているだろう、と。
だが、そんな町の声を千春は気にもしていなかった。
二月に姉が結婚し、家族で亀の子温泉に旅行した時の事を 千春は嬉しそうに語ってくれた。
ニッカポッカにサングラスで突っ張ってはいるが 家族想いの心根の優しい男なのだ。
その頃 作ったのが【かざぐるま】や【父さん】という曲だった。
・♪“門出”イントロ(BGM)・
こうして、千春のラジオ出演が始まった。
金曜日の夜に夜行で足寄を出て、土曜日の朝 札幌に着く。ラジオに出演して、日曜日に再び足寄へ帰る。
こうした日々の中で、次々に名曲が生まれた。
・ぽぉ〜ッ!!(汽車の汽笛音)・(BGM:門出)
【夜汽車】などは、十勝平野の朝焼けを 汽車の窓から見ながら作ったそうだ。
俺は、千春の新曲を聞きながらデビュー曲を 悩んでいた(?)。そんな事ばかりを考えていた。もちろん、千春は知るよしもなかった。
俺の予想した通り、千春はみるみる成長した。
初めは司会者をつけて歌うだけだったコーナーを トークもいけるとくんで千春一人に【 ? 】した。
千:『竹田さん、俺 札幌へ友達ができたんですよぉ、行きつけのお店で。東京から来たミュージシャンとかぁ、中島みゆきっていう歌の上手い女とか。色々知り合いもできたんです。』
・♪“門出”
投げ捨ててぇ〜 僕も手を振る 姿が見えたら 負けだよ 一度でも 後ろを振り向いちゃ
今はただ お前は 自分の夢へと 旅立て 心の翼を 広げて そのまま 大人になるがいい
全てを投げ捨てて いつか どこかで また会える 日も来る
涙はいやだよ お前の門出さ いつかどこかで また会える 日も来る
もう一度 会えたなら その時は 離さない ♪
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本:松山千春スペシャルドリーマー【足寄より 旅立ち編】第一夜
◆只今の出演◆
松山千春:塚本高史
竹田健二:田口トモロヲ
上司:堀川良
その他:朝倉薫演劇団 でお送りしました。
お送りした曲は、
松山千春【こんな夜は】そして【門出】でした。
富:来週は・・。東京に行ってレコーディング。
そしてシングルレコードが出て、まず最初、北海道から初公演をして それから、千春がブレイクしていく..ってあたりかな?
これもまたドラマがいっぱいあるんですよ。
本:それでは次回、【松山千春スペシャルドラマ 足寄より〜旅立ち編〜第二話】を どうぞお楽しみに。
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〜書起し後記〜
◆表示について◆
松山千春(以下「千」)
父親(以下「父」)
竹田健二(以下「竹」)
山本マネージャー(以下「山」)
木瀬アナウンサー(STVラジオアナウンサー、フォーク音楽祭の司会者(以下「木」))
その他(守衛(守)・DJ(DJ))
※ ラジオドラマ形式で作られているCDというのを、音楽評論家の富澤一誠さんが高く評価されてました。
※ 放送県外のため、雑音が多く、聞き取れない部分が多々あり、DJの部分は多く略させていただきました。
発売CDの文中も、聞き取れなかった部分があった為、【 ? 】になってる箇所などあり、申し訳ございません。
















